Ultimate General: Civil Warの話

 まともな戦術ゲームだと思うことのできる、あまりに希有な作品の一つであるUltimate Generalの2作目がEarly Accessで出ていたことに気が付き、早速プレイした。前作はその範囲をゲティスバーグの戦いのみに絞ってAIを練り上げることに取り組んでいたわけだが、今回はこの資源を活用すべくキャンペーンモードを作り、南北戦争における複数の戦いにAIを適用したというわけなのだろう。言うまでもないことだがコーディングにおいて既に作られた資源を利用、拡張することは、一から作ることに比べて遥かに容易である。だから言い方を変えれば今作は制作チームにとっては稼ぎ所ということになる。付け加えるならTotal Warへの不満に端を発した制作がTotal War同様の転落へと突き進まないことを祈るばかりである、というのは私の知る限りUltimate Generalに並ぶものが現在無いから。

 具体的な例を挙げよう。Total Warがした仕事とは、「これぐらいの規模の戦いを、これぐらいの高画質でできる」ということであったと私は考えている。だからAIがひたすら前進しかしなくとも許された(AIが駄目だと言われても無視して新作を出せばよい)し、つまりそれを表現する3Dエンジンに価値があるという自負があったのだと思う。加えてTWのシングルゲーム(キャンペーンモード)においては、他の経営ゲーム等からアイデアを流用して簡単に作った"戦略"パートの方がプレイヤーにとって重要になってきてしまった(勝てる戦いしか起きないよう取り計らう)ことで戦術級ではなくなっているとは、以前の記事に述べたところである。

 キャンペーンモードを実装したUltimate Generalだが、その内実は、マップとストーリーを用意し、継続するゲームのために育成要素を入れたということである。各戦闘にストーリーが必要なのは、戦術は状況の裡にしか存在しないからである。TWはそれをわかっていなかった、否わからせてくれたわけで、確かに毎回異なる編成の軍が対決する、しかし戦闘の内容は毎回同じであった、これにより序盤の数戦以外は圧倒的な戦力で自動戦闘を繰り返すだけの作業である。これに対して本作UGは、状況を与えることに加え、プレイヤーが編成している軍の規模に応じて敵軍の規模を調整することによって、常に挑戦的なプレイができるようにすることを目指している。何も作らずこんなことを言うのもあれだが、このことは、ストーリーを、状況を"戦術"を可能化するためには与えなければならないことを作者が知悉している以上、その線上において自然にできる配慮と言え、褒めるところではない。重要なのはストーリーを作ったことで、これは確かに"毎回同じ"あるいは似た条件の戦闘を起こすものだが、前作でもそうであったようにそれがむしろ異なる流れに帰着させるという点で、TWとの対照がおもしろい。実際私も何度も負けながら色々試すことができた、そういう余地があるということで、そもそも敢えて負けうる戦いをしないという"戦略"レベルでの発想は無効化されている。

 しかし「敵軍の規模(数)を調整」とか「高難易度では報酬が減る」とかいう字面に、私は危険性を覚えるものである。パラメータを弄るというのは本質的な仕事ではないと考えているからだ。パラメータを調整というか最初に確立することは必要だし、調整は面倒くさい仕事でもあるが、そこに手を出すのは危ういのではという気がする。一度エンジンができてしまえば、あとはパラメータとグラフィックを変えて別作品として売り出すことができるのは皆知っての通りで、そうしているゲームシリーズは多い。UGをプレイしながら、私たちはそこに亡きTWの影を、TWの否定を見ている。シリーズ化については、だいたい初期の作品がよいとか、処女作が云々と小説家について謂われることと似たような事情なのかもしれない。

 キャンペーンを実装したUGは、いまでは自由度の高い、否低いRPGのような風貌をとってきた。次は育成要素について述べよう。自分の軍団を組織し、それを以て各戦闘に乗り込む……確かに作るならこういう構造になると思う。このことにおける新しさを見出すとすれば、全体を通じて獲得できうる総資金、総人的資源などが最初からほぼ確定していることで、これも戦術性をもたらすために必要なことである。しかしUGが初めてではない。Early Access v0.74 現在では"CAREER"と記されている、プレイヤーが調整でき、何かコンセプトを持ってプレイする助けになりそうな要素がある。たとえば報酬を増額する政治力とか、死者のいくらかを復帰させるmedicineとか、部隊の最大規模や編成を変える組織力、相手の情報を得ることができる偵察力、みたいなものである。
(細かい話なので今プレイしている人しかわからないだろうが、少なくとも現状 EA v0.74 では、資金/人的関係の要素としてはPOLITICS(報酬の資金/人的 +2.5%)以外意味を為していないと考えられる。これはたぶん修正されて、POLITICSの上昇が+2%、他の個別的上昇が+3%、みたいに差がつく、あるいは個別型に有利な要素が追加される。)
ただ、この"CAREER"は蛇足だとおもえる。取って付けたような要素であり、TWを否定しながらTWに似てきたなと思っている。現在の +2.5%みたいな上昇幅の問題ではなく、こういうパラメータに関わる思考をプレイヤーに強いてしまうと戦術ゲームがより戦略的な方向にシフトしていき、崩壊するのではないか。同様のことが各部隊の練度、経験値獲得によって得られるPERKについても言える。
(これも細かい話になるが、ゲームの設計上、プレイヤーは常に敵軍よりも不利な初期状態で戦闘に臨むことになる。それは部隊数での劣勢、部隊の大きさでの劣勢を意味する。部隊数での劣勢から言えるのは、自軍の一部隊あたりの重みが敵軍におけるそれよりも大きいということである。それが意味するのは、部隊が敗走/後退状態に陥ることの危険性が自軍においてより顕著であるということである。ゆえに、PERK-LV1において 速度+10% か 士気+10 かという選択はナンセンスである。なぜなら、機動つまり戦術以前に何らかの戦術のためには戦列を保たなければならない、敵の攻撃に耐えられねばならず、そういう局面が(主に小戦闘において)多々ある関係上、PERKは士気の一択となるからだ。そしてこれはゲームシステムが強いてくる合理的選択なので、PERK 速度+10%はシステムにとってロマン的な位置、つまり有用性を何とか見出すべき位置に措かれていることになる。異論はあると思うが、ともかくこうしてシステムが一つの合理的選択を強いるのなら、わざわざPERKを選ばせることなど余計な手間であって必要ないと考えられる。無用の確認作業、ナンセンスな選択、こういうものが私たちを本当に疲れさせ、続ける気力を削いでいくからである。)
こうしたことはパラメータ調整の問題ではない。速度+10% or 士気+10 かではなく、たとえば、LV1は 側背からの射撃によりよく耐える or 敗走からの復帰時間を短縮する といった同じ視点からの別の方向としての二択にしたらよい。巷の戦術ゲーム風の安易なパラメータ変更という腐ったリンゴが最終的にはゲーム全体をだめにするのは忍びなく、良案がなければ、どうせどのプレイヤーも一つのパターンでPERKを取るようになるだけで、そこに達するともうゲームをやる気を無くすことになるから、とスパッとやめるのも一つの手だ。それに現状のなだらかな練度上昇の表現(性能が全体的に向上していく)は、階段状の上昇よりもずっとましである。レベルアップとかPERKとかを導入すると、たとえば★★★になったら、あとはギリギリそのラインを割らないように練度を保つ、みたいな作業が必須となり、できることが減っていく。これは先述の、選択肢を増やしたが故にむしろワンパターン化するという話と通底するところだ。補充できる兵を熟練兵と新兵に分けたら解決するかもしれないが、面倒さが増す[追記註:補充できる熟練兵の数も資金/人的同様に制限するということ]。それを考えたら、★★★は名誉的なものとして低利益で永続させるのがよいと思える。ゲームを壊さず、プレイヤーに選択肢を与えて前進する感覚をも与えるための育成要素、これはなかなか難しい取り組みなのだろう。そしてそれゆえに安易な方法を採れば失敗すると思う。長くなったが、これについては作者らが再検討して問題に気が付き変更、削除するかもしれないし、そうなることを願いたい。

 今回はここまで。

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