カテゴリジャンパー with 絞り込み: ココロ具象化計画

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結果

普通の少年

奔放な一人の少年が
髪まで真っ赤に染め上げて
どうしようもなくつまらないことを
聞こうとして いまはじめて名前を呼ぶ

奔放な一人の少年が
朝日の廊下に 上目遣いで
どうしようもなく不安に震え
おずおずと いまはじめて名前を呼ぶ

もう一人の少年は
たやすく声を理解して なにも聞かずに理解して
即断 その忌まわしき判決は
少年の口唇に薔薇を刺す

もう一人の少年は

葉緑体曰く

つやのない 子供の頃の蒸気機関車
ブリキのように思い込んでいたが ほんとうは
プラスチックの景品のようなものが 言うのだ
最後の賭けであるといった 面持ちで
きみの実家の きみの部屋でしようと思う どうだろうか
北極の氷の溶けるとき 誰かのコーヒーもからと音をたてる
もうきみの部屋などはないのか
いや あるよ
大きな窓を 網戸ごと開け放して
最後の蒼空のような 八月の向日葵の

どこに行ったら正解の女に会えるんだ

どこに行ったら正解の女に会えるんだ
肥大した月が憂鬱そうに佇まう
国道を鉄屑共が抜ける音
どうでもいい街灯の陽
どこに行ったらいい
いや 最悪おまえでもいい
どこに行ったらおまえに会える
なんとかしてくれ
このグズグズ わんわんと反響している
内臓をなんとかしてくれ

ああ 額を押えると 汗
夏なのだ
夏なのだから もういい
たしかにアンニュイは涙ぐんで

空の奥

死と 死と
雨音は死の近づく足音である
死と 死と 死と 死と
割れた銃眼
道のない ゆきどまる道の
左右 背後
地平のない 区切りのない
セピアインクはぶち撒かれていて
歩く 僕は歩く
その独断の跡を雨が降っている

雨と歩調を合わせて踊る仮装大会
けして共有しない雨宿りの文学
蒙昧 すでにインクは流れとなり
かろうじて掲げられた溺死人の白旗を追い越し

無銘であるとは

町のくずれたブロック塀の脇に
腰掛けている少年が殺人者である
六月の風のなかには少年でさえ
六月を見いだす
青く茂ったソメイヨシノのがさがさした
樹皮に寄りかかって あなたが
感じている一片の詩篇的情緒より
人工的な音色だけを
人工的な景色だけを除いた場所に
少年は立っている

時にあなたの空想とすれちがう
殺人者の形式がある
空想がもしたましいの

天才賛歌

アアーいい加減だなアアー
と世界の果てまで響く音
諦めないよう諦めを諦め
天への階段をのぼる
階段を

ああ しぬ
世界の地核に響く叫び
静まりかえったホールで
墜ちてきた胎児のフリをねむる

その階段を振りはらう
その喉を絞め上げる
そのガラスを叩き割る
どれも傷をつけ
立ち止まらせるようにのこす

世界の隅で女が死んで
彼は天上へ飛び上がる

"夏"

定期の日付で夏は終わる
青空の崖でつまさき立ちになったとき
はじめて冷房のせいで汗は流れる

僕が切符で乗っていることをしらないひとは
定期を更新しつづける
耳栓をしたままで
誰かの文句を読みつづける

戦争になってしまったら
僕は"いい意味で"君を撃つだろうし
"いい意味で"君は撃たれるだろうし
そのときには
ひねり出される言葉がいいのか

女神融解

融けていく……
硫酸の冷たい水の中に
融けていく

形が失われていく……
表情のどろりと爛れ
筺を埋める水分へ
落下していく

沈み込んでいく……
ずぷずぷ、こぷこぷと
冷たい酸
たいまつの最期だけは閉ざされている

夜が終わる前に「寝てしまう」

最後なんてどうでもいいんだというと君は笑う
言葉がいらないというのではなく、言葉がないのだ
ここへ来て、最後というのがどこなのか思わない
君だけが寝ている

最後だけ夜は明けるというと君は目を瞑る
穴だらけの言葉をわらうのだろうか
ここが日常なのかを思わない
真っ黒な外を見ている

最後にはあなた以外のすべてがノイズになってしまいそうだというとどんな顔をするだろう

名もなき平日の一日へ贈る

毎年毎年なにかがもたらされると信じるから電車に乗り組んだのだが
意識内にはなにもない
恥をのこして降りる

拒絶したはずの力によってむかう
遅延証明
だれもなにも言わない日がきている

目のない食堂
もくもくとめしを食う
出る

しんとしている
音は風すら存在しない
わたしの声はふるえている

座禅しかしらない
建物が鳴らされる
誰も来ない